筆跡鑑定セルフチェック第5回

筆跡試料作成2019

筆跡鑑定の実務的な比較観察

筆跡鑑定のセルフチェック第4回目までで,筆跡鑑定を行うための文字を抜粋するところまでを終え,今回からいよいよ実務的な比較観察による筆跡鑑定を行っていきます。このブログを読んで「自分で筆跡鑑定をやってみよう。」と思われた方の筆跡鑑定を行う文書は様々ですから,汎用的な鑑定方法をお教えします。

筆跡鑑定の重要ポイント1:横画の観察

筆跡鑑定では,文字における横棒・横線のことを横画(おうかく)と呼びます。横画は漢字・平仮名・片仮名・ラテン文字・算用数字・記号など,全般的に左から右へ筆記具を動かして(→)の方向に執筆されますが,そのときに右上がりや水平,右下がりなどの角度が生じるほか,上方や下方に膨らんだり,波打つような線など形状も様々であり,執筆者の個性が残りますので,そうした情報を取得します。

また,漢字の「三」などのように,横画は上から下へ重ねて執筆されることが多く,そうしたものでは横画の角度や間隔が同様であるか,それともバラバラであるのかなどを観察したり,それぞれの長さがどのような状態であるかを観察したりして,情報を得ていきます。

筆跡鑑定における横画の観察では,このような点に留意して情報を集め,観察している文字ごとに特徴を書き出していきますが,「見た目だけの判断」では主観が入り「筆跡鑑定」にはなりませんので,分度器や定規,コンパス等を駆使して「数値化」されたものを書き留めていきます。

筆跡鑑定で横画の角度を計測している様子:右上部へ16度の角度で送筆されている。

鑑定資料と対照資料の同字に対し,同じ質・量の観察作業を行い,書き出した情報を最後に突合して異同の判断を行いますが,基本的に数値化されたデータの突合ですので,異同の判断にかかる時間は少なく,慣れてくると情報収集の段階で異同の結果予測ができるようになります。

筆跡鑑定における横画の観察:注意点

第4回で実施した「スキャナーを使った比較筆跡画像の作成方法」で,筆跡鑑定用の筆跡を抜粋するときに,スキャナーのガラス面に置いた書類が曲がっている(角々が合っていない)と,書類についた曲がり角度の影響を筆跡も受けてしまいます。せっかく抜粋した筆跡に不要な角度がついてしまい,不正確な情報に基づく筆跡鑑定になり,最終的な異同の判断にも影響しますので,ご注意ください。

今回はここまでです。次回をお楽しみに!

通算102回目の筆跡試料作成

梅雨入りしましたが,ここ横浜では雨が少なく,本日も晴れ時々曇りの予報です。

明日は夏至。

ほぼ真上から降り注ぐ日差しは,寂しくなりつつある頭髪を抜けて地肌まで届き,その熱さにも夏の訪れを感じさせられます。


最後までお読みいただき,ありがとうございます。