筆跡鑑定の書類属性における相性

筆跡試料作成2019

遺言書を遺言書で筆跡鑑定する

筆跡鑑定のご依頼では,遺言書の筆跡に対し,同じ遺言者が過去に書いた遺言書を使って筆跡鑑定を行うことがあります。一般の方は遺言書とは縁遠いと思いますので奇異なことのようにお感じになるかもしれませんが,例えば,お料理の食べ合わせやカラーコーディネートと同じように,筆跡鑑定を行う書類の組合せにも好適と不適があります。
ここでいう遺言書とは自筆証書遺言を指しますが,ほとんどの方は普段から遺言書を書くことはありませんので,執筆機会の極めて少ない書類という位置づけになります。こうした執筆機会が少ない書類には,願書や婚姻届等も含まれますので,そうした書類を本人の筆跡として遺言書の筆跡鑑定に用いることは可能です。しかし,書式や執筆内容が同様のものとなると候補が少なくなってきますので,遺言者が過去に書いた遺言書があれば,それで筆跡鑑定を行うことが最も好適になるのです。

書類属性における相性とは

あまり難しく考える必要はないのですが,要するに同じようなシチュエーションで執筆された筆跡どうしを比較鑑定する方が,正確さの度合い=確度が高まりますので,好適なものを組合せようという考えによるものです。わかりやすく表にまとめると以下のようになります。

資料区分 鑑定資料
対照資料 書類属性 遺言書 公文書 私文書 日記 メモ はがき 落書き
遺言書 ×
公文書 ×
私文書
日記
メモ
はがき
落書き × ×

鑑定資料が落書きで,それを遺言書を対照資料として筆跡鑑定を行うことがあるとは思えませんが,落書きをする人は自分の筆跡であるとバレないように普段の筆跡とは異なるように書こうとしますので,遺言書や公文書,私文書,日記やはがきなど,筆跡をごまかす必要がない書類の筆跡とは相性が悪く,「筆跡鑑定には不適」という考えによるものです。

公文書は公的な書類全般で執筆機会が少ないものに分類されます。私文書は手紙文に代表されるようなものですが履歴書なども含みます。日記はそのものを指し,メモは付箋紙タイプのものを含みます。普段書きの筆跡になりますので執筆機会が多いものに分類します。はがきは私文書にも含まれますが,ここでは通販の申し込みやお店のアンケートなど定型文に対する記入や回答を想定していおり,依頼内容から逆説的に怪文書の色を持たせています。最後に落書きはそのものを指しますが,執筆対象が紙なのか,壁などほかの素材であるかなどにより執筆機会の多寡が変わります。

実は,この表は15年程前に作成して当時のホームページに掲載していたものですが,あながち的外れでもなかったな。という印象でいます。

もっとも,この表の好適な組合せだけで筆跡鑑定を受件できることは多くはないので,それを補うために技術革新や技能向上が必要なのですが,お客様からのお問合せをいただきましたので,こうして再登場させた次第です。

「筆跡鑑定セルフチェック」でも使えると思いますので,指標の一つとしていただければ幸いでございます。

116回目の筆跡試料の作成

天皇陛下の祝賀パレードは,快晴の秋空のもと厳かに,華やかに過ぎていきました。日曜日の午後ということもあり,テレビですが全般を拝見することができました。思えば,ご成婚パレードのときもそれまでの雨が上がったような気がします。

筆跡鑑定の研究用試料の作成 2019年11月11日

本日,読売新聞は休刊のため昨日の新聞を写真撮影に使用しました。

昨夜の雨も今朝にはやみ,横浜では青空が広がっています。何をするにもよい季節になりました。


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