筆跡鑑定人になるには

筆跡試料作成2020

筆跡鑑定ができる人になるには

「筆跡鑑定人になるにはどうしたらよいですか?」というご質問をいただくことがあります。テレビドラマや小説などの影響からか,身近な存在になりつつあるようでうれしく思います。

2012年頃,筆跡鑑定人を志望する方に直接事務所へ来てもらい,実際の鑑定作業を交えてレクチャーした経験もありますが,今にして思うとそれは筆跡鑑定の作業の流れをお話したに過ぎず,いわば工程を解説しただけのものでした。その方はその後ご結婚されて次第に連絡が取れなくなりましたので家庭に入られたものと思っておりますが,筆跡鑑定人を志す方からのお問合せがなくならないことを受けて,改めて筆跡鑑定ができる人=【筆跡鑑定人】に向いてる人の性格を書き留めておこうと思います。

筆跡鑑定人として性格が向いてる人

筆跡鑑定人にも向き不向きというものがあります。筆跡鑑定に向いている人の性格は以下の通りです。

  • 公私混同しない人
  • 自信過剰でない人
  • 具体的な表現をする人

筆跡鑑定人向きの性格「公私混同しない人」

筆跡鑑定の結果は人生を左右する重大事になることがありますので,鑑定結果を導くための鑑定作業や判断に主観が入ってはいけません。この主観というのはともすると「鑑定結果ありきの筆跡鑑定」ということになりかねないため危険です。
「公私混同しない」という性格を挙げた理由は,筆跡鑑定を受件する際には依頼人から様々なお話を伺いますが,やはり人間ですからそこでは共感することもあるでしょう。しかし,それを筆跡鑑定に被せてしまうことは鑑定結果を歪めることにつながりかねませんので,「鑑定作業は別!」という意気込みで望める方がふさわしい性格といえるでしょう。

筆跡鑑定人向きの性格「自信過剰でない人」

いろいろな誤解を招きそうですが,これは「自分を疑える人」といってもいいでしょう。私の筆跡鑑定では「人間の錯視」と「主観による筆跡鑑定」の関連性を研究しており,人間の目に頼り過ぎることがないよう,筆跡鑑定には長さや角度の測定を取り入れ,それに基づいた比率計算の結果を踏まえて鑑定結果を導き出すようにしています。
こうした研究や経験により,自分の目で筆跡を「見ただけ」の,執筆者の異同の評価がかなり不安定であることを知りました。つまり私は,私の「ただの筆跡鑑定眼」のようなものには自信がありません。しかし,そうした状況に身を置くことで第三者でも検証が可能な鑑定方法を開発・取り入れることができると考えており,主観によるだけの筆跡鑑定を排し,客観的事実に基く筆跡鑑定を行えると信じています。

筆跡鑑定人向きの性格「具体的な表現をする人」

筆跡鑑定から主観を排除するためには,「なんとなく」という概念を排除する必要があると考えます。この「なんとなく」は言い表しがたい状態や感情を表現することに用いられ,打ち明けた人に共感を得ようとする言葉に区分していますが,この「なんとなく」は,あいまいさを許容することになるので筆跡鑑定には不向きな言葉です。実例としては「長さ加減が類似している。」や「角度が大体あっている。」という表記を指しますが,具体的ではないので第三者の検証を阻みます。
それでは,「長さが2倍であることが類似している。」や「約30度の角度であり一致している。」という表記はいかがでしょうか。定規や分度器を使って検証することができますね。こういう表記をしようとする人は筆跡鑑定人に向いていると言えます。

筆跡鑑定の資格試験

筆跡鑑定人になるための資格試験はありません。「筆跡鑑定士」と呼称されるために民間団体内で行われる試験がありますが,それも公の資格ではありません。
いずれ,筆跡鑑定を職業とする際の資格制度ができるかも知れませんが,その前にAIを使った筆跡鑑定が開発されるのではないかと私は考えています。

通算134回目の筆跡試料の作成

筆跡鑑定・印章鑑定の研究用試料の作成:2020年5月11日

週明けから気温が高くなり,ここ横浜では本日28度を記録しました。

初夏を通り越してもはや夏。奄美地方では梅雨入りしたとか。

人を置き去りにして季節は進んでいきます。


最後までお読みいただきありがとうございました。
次回ブログまで,あなたと私に良い風が吹きますように。