印章の偽造防止の考察

筆跡試料作成2018

5年目を迎えた筆跡鑑定と印章鑑定の研究用試料

8月21日で満4年を迎え,5年目に突入した筆跡鑑定と印章鑑定の研究用試料の作成ですが,この4年間に印章鑑定の研究用試料の作成に変化がありました。

印章鑑定の研究用試料

実印や契約印などの印章を書類に押印するとき,朱肉をつけて押印しますが,この朱肉の種類も多岐にわたるため,印章鑑定の研究用試料では「印肉」という古来からある朱肉を始め,近年よく見かける液体タイプの朱肉が染み込ませてある「朱肉スタンプ」,それと似たもので「スタンプインク」,そして「シャチハタ」に代表される浸透印を使用して研究用試料を作成しています。

印章の偽造防止を考える

印章鑑定をしていてよく遭遇するのが,印影のニセモノです。

見た目からして本物の印影とは形状が異なるお粗末なつくりの偽造印影から,マイクロスコープを駆使して発見できるような完成度の高い偽造印影など多岐にわたりますが,一鑑定人として最近思うことは,日本は工業国でありノーベル賞受賞者などを多く輩出する最先端の科学技術を有しているのに,偽造が困難な印章を開発しようという気配が見られないことです。また,指先の器用さから,繊細な文様を彫り込んだ印章を作成することは可能なようで,そういった技工士さんもいるようですが,安価な機械彫りに席巻されているようにも思えます。

ー印章自体を眺めてみる。これは造形物であるので「同じものをもう一つ作ろう。」と思えば,できないことはないだろう。-

ーでは,朱肉はどうか。特別に調合した朱肉を作成し,それを印章と紐づけて印鑑登録を行い,その朱肉で押印したものでなければ実印として認めないというのはどうだろう。紫外線や赤外線などを当てると色味が変わったり,磁気を帯びたりしているというのはどうだろうか。ー

ーまたは,紐づけられた朱肉以外を付着させると,化学反応を起こして印面が変形してしまうというのはどうだろうか。ー

今は,こうした空想が浮かんでは打ち消し,浮かんでは打ち消しの繰り返しですが,いずれは取り組んでみたい課題です。

筆跡鑑定と印章鑑定の研究用試料の作成:通算146回目

筆跡鑑定と印章鑑定の研究用試料の作成:2020年9月11日

本日の横浜は,晴天で日差しは強いのですが風があり,日陰に入ると過ごしやすく感じられます。

自分は汗かきなので涼しい気候や寒い季節が好きなのですが,暑い季節も終わりが近づいてくると,なんだかいとおしく思えてきます。

つくづく勝手な生き物です。


最後までお読みいただきありがとうございました。
次回のブログ更新まで,あなたと私に良い風が吹きますように。