筆跡鑑定で平仮名を判別する

筆跡試料作成2018

筆跡試料の作成-69回目

筆跡鑑定に役立つ知識が多いからと,私はずっと新聞を購読していましたが,最近はスマホにニュースが届くようになり,加えて,電子版で読むようになったからと,今年5月で契約終了しましたが,所員の熱い要望を取り入れて再契約しました。

2018.07.21筆跡試料の作成

そんな訳で今回からまた,新聞とのコラボ写真です。
タイムリーな話題として,カジノってなんか,日本にしっくりこないと思います。

平仮名のみの筆跡鑑定で,異同の判断を行う

筆跡鑑定は通常,漢字を主にして,平仮名や片仮名,算用数字,記号,ラテン文字等の筆跡を複合的に観察して結果を導き出します。典型的な文書としては自筆証書遺言書,いわゆる「全文を手書きで書いた遺言書」が代表として挙げられ,筆跡鑑定の依頼件数の上位の一つです。

平仮名のみで構成された文書

筆跡鑑定の依頼で少なくないのは,怪文書を筆跡鑑定して執筆者を特定することです。怪文書は漢字かな交じりのものもあれば,漢文のように故意に漢字で書かれたものや,平仮名のみで書かれたものなどがあります。偏った文字種で怪文書を作成する意図は,執筆者の特定を困難にすることと推測されますが,そうした文書の筆跡鑑定では,比較する文字は当然平仮名のみとなりますので,相談者の中には「平仮名だけで筆跡鑑定ができますか?」と尋ねてくる方が多くいらっしゃいます。

平仮名は通常文字が48字,濁点・半濁点付が25字,拗音などの捨て仮名10字が日常的に使用されており,漢字と比べると文字数が圧倒的に少ないのですが,幼児期の教育で漢字より早く習得されるため,執筆者の特徴が残りやすい文字と考えられ,平仮名のみの筆跡鑑定は,特異な状況を除き問題ありません。

平仮名しか筆跡鑑定できない例

上記以外の平仮名の筆跡鑑定事例では,鑑定を行う文書と対照する文書に共通した漢字等がなく,送り仮名や助詞(てにをは)などの平仮名のみで筆跡鑑定を行うケースです。
相談者の中には,あらかじめ文書に目を通されていて,比較できる文字が少ないと,あきらめかけている方もいらっしゃいますが,前述の通り,平仮名には執筆者の特徴が残ることが多く,筆跡鑑定で筆跡の異同を判断することが可能なのです。

平仮名の筆跡鑑定をしない鑑定人もいる

開業した当時,警察の鑑識課では8画以上の文字でないと鑑定しない,と聞いたことがあります。その真偽は分かりませんが,弊所へ相談してくる方の中には「平仮名は筆跡鑑定しない」といって鑑定人から断られたという方もいらっしゃいますので,平仮名の筆跡鑑定を行わない鑑定人が実際に存在します。

何を根拠として平仮名の筆跡鑑定を断っているのか存じませんが,平仮名は日本固有の文字種であり,日本語を構成する上で欠かせない文字ですし,特徴の出やすい文字ですから「日本の鑑定人がひらがなの筆跡鑑定をしなくて誰がするのか」という気持ちになります。

情報量も多く,筆跡個性も出やすい文字種であるので,筆跡鑑定を依頼する際は,平仮名の鑑定も行うのか確認してから,筆跡鑑定人を決めるようにしましょう。


最後までお読みいただき,ありがとうございました。