筆跡鑑定セルフチェック第9回目

筆跡試料作成2020

筆跡鑑定の実務的な比較観察その5

前回のセルフチェック(第8回)から,気がつけば5か月が経っていました。ご自分で「筆跡鑑定をやってみよう!」という方で,このブログを参考にされていた方には大変お待たせしました。不定期連載ゆえうっかりすると,こういうことがありますことをお赦しください。

さて,これまで行ってきた筆跡鑑定の実務的な比較観察では,「横画の観察」「縦画の観察」「気宇の観察」「文字形態の時代考証」と進めてまいりました。少々専門的な話になりましたが,お役立ていただいていることと思います。

本日は,文字種ごとの大きさの観察についてお話しします。

文章を書くときの文字の大きさを調べる

私は「POP広告クリエーター」という資格を持っていますが,この資格を取得する試験は実技試験であるため,「POP文字」というものを勉強し練習するのですが,それまで自己流でPOPを書いていた私は戸惑いました。当時の私は,文章を書くときに漢字を大きく書き,平仮名などを小さく書く癖がありました。これは画数の多い文字が大きく,少ない文字は小さくなるという自然な現象だったのですが,自己流で書いたPOPにもそうした書き癖は当然反映されていて,気にしたことはありませんでした。しかし,当時のPOP文字のテキストには画数の多い漢字でも,画数の少ない片仮名でも高さと幅をそろえることがきれいに見せる基本であるというようなことが書かれており,「文字の大きさをそろえる」ことの練習を何回も繰り返し行いました。その甲斐あってか試験には無事合格でき,資格取得を果たして当時勤務していた会社への面目も立ったのですが,それ以来私は人の書いた文書を見るたびに文字の大きさが気になるようになりました。今にして思えば,その体験は筆跡鑑定人になる筋道になっていったような気もします。

本日のポイントは「文字種ごとの大きさの観察」です。大多数の人は,漢字は画数が多いので文字形態が大きくなり,平仮名や片仮名は画数が少ないので小さくなる傾向にありますが,同じくらいの大きさで書く人もいますし,「~です。」の「す」が漢字より縦幅が大きい人もいます。また,「~ちゃん」や「きっと」などの拗音や促音を書くときに,本来は小さく書く文字を大きく書くので「~ちやん」や「きつと」になっている人もいます。

このように,文章を書くときの文字の大きさにはその人固有の癖が潜んでいますので,それをつぶさに観察します。私が鑑定作業をするときには専用のツールを使いますが,素人の方でしたら直線定規を用意して,行ごとに定規を当てて文字の高さを観察します。また,方眼の罫線が付いた透明な下敷きなども販売されていますので,そうしたものを活用できれば精度が増すでしょうし,数値を記録して客観性を加えることもできます。

今回は以上です。簡単にでき,しかも鑑定結果を導く材料としても効果が見込めますので,あなたの筆跡鑑定に是非加えてみてください。
不定期連載ですが次回をお楽しみに。

通算125回目の筆跡試料の作成

筆跡鑑定の研究用試料の作成 2020年2月11日

とどまることなく,新型コロナウイルスの犠牲者が増えていて,発表では1,000人を超えてしまったということです。

横浜港にはクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊していて,乗客の皆さんの心労はいかほどのことか,わが身に置き換えたとき突然叫びたくなるような強烈な嫌悪感がこみ上げてきました。

楽しい旅になるはずが軟禁生活を余儀なくされるなど,緊急事態とは言え忍びないこととお察しします。

どうか一日も早く終息しますように。


最後までお読みいただき,ありがとうございました。