民法改正 遺言書の押印廃止に物申す

筆跡鑑定のはなし

遺言書の押印廃止に反対します

2026年4月に閣議決定された民法改正案により、遺言書への押印義務が廃止される見通しとなりましたが、遺言書への押印義務を廃止すれば遺言書の偽造がしやすくなってしまうと考えるため、弊所はこの閣議決定の見直しを求めます。
今回の閣議決定では、パソコンやスマホで作成した遺言書を法務局が保管する「保管証書遺言(デジタル遺言)」の導入も明らかとなりましたが、遺言書はどのような手段で作成・保管をしても、日付が新しいものが優先されるという性質を持つため、遺言書に不服がある者が日付の新しい遺言書を偽造することが後を絶たず、筆跡鑑定の依頼件数を押し上げている現状があります。
そんな中、自筆証書遺言の筆跡鑑定において鑑定結果が同一人傾向となったときは往々にして実印らしき印影が押印されていることが多く、それが同異判定の根拠になることはありませんが、押印義務を課すことによって遺言書偽造の歯止めになりますので、押印廃止を見直し、むしろ「実印の押印」と遺言書に記載された日付1か月以内の「印鑑登録証明書の添付」を義務とすることを提案いたします。

近年は「悪しき風習」とされ押印廃止論が活発になっていますが、それは主に法人内で稟議を円滑に行えるよう改善するための考え方です。日本には古来よりハンコ文化があり、それによって権利を守られたり、救われたりした方も多くいますので、一部でにぎわっている押印廃止論を延長させて、自筆証書遺言への押印まで廃止しようとするのは危険であり、偽造を助長しかねないものになると思いますので、御再考いただけますようお願い申し上げます。

令和8年6月21日
田村鑑定調査 代表鑑定人 田村真樹