カルテの筆跡鑑定

筆跡試料作成2019

診療録(Karte)の筆跡鑑定

病院で診察を受ける際,医師が診療内容などを記録するものをカルテ(Karte:ドイツ語)といい,日本では診療録などとも呼ぶようですが,お医者さんがさらさらと書いているものが文字なのか絵なのか見分けがつかず,具合の悪いなか「何を書いてるのかな?」と気になったものですが,成人してからドイツ語で書く医師もいることを知り一人合点したのですが,今回はカルテを筆跡鑑定したときの話です。

診療経過を明らかにするための筆跡鑑定

カルテを筆跡鑑定する案件はそう多くはありません。弊所でもこれまでの総数が10件を少し超える程度しかないので希少な経験になります。依頼人は個人の方が多く,診療を受けた医院の医師が書いたとされるカルテに書かれていることが,実際の診療や経過観察と一致しているのかということを明らかにするための「本人確認」を目的としているようです。
つまり,診察したのは医師だが,カルテを書いたのは他の人ではないのか,だから次回診療を受けた際に,薬や処置を変えられたのではないか。という疑念を抱いた患者がカルテを入手して,疑義のある診療日の筆跡に対し,その前後の診療日の筆跡を医師の真筆として筆跡鑑定を行うものです。

ところが,先にも書きましたがドイツ語や医療用語が多く,また,ほとんどが速筆であるため筆跡鑑定が困難であるという現状があります。ドイツ語をはじめ医療用語などを調べながら筆跡鑑定を進めますので,通常の案件と比較して時間がかかります。

そうした中,筆跡鑑定の結果として「別人の筆跡」となったカルテも少なからずあり,診療の現場ではどのような体制であるのかわかりませんが,私自ら鑑定結果に驚くということもありました。

塗りつぶされたカルテ

その他には,カルテの一部が修正液などで消されて,書き直されている部分の可視化を行い,最初に何が書かれていたのかを調査することもあります。

入院患者に対して,医師から看護師などに対して,薬の投薬量やその種類などがどのように指示されたのかを明らかにするためのものでしたが,赤外線透過観察により修正液で消された箇所の下に何が書いてあったかを明らかできたため,依頼者にとって有効な鑑定となりました。

近年ではパソコンに入力するタイプのカルテが主流になりつつあるようですが,リセットすることができず,全てのアクセスログが残るなど,患者の権利を保護する機能があることを望みます。

111回目の筆跡試料の作成

ここ横浜では,今日は朝から曇り空ですが,気温が高くないことに加え湿度も比較的低いようで過ごしやすい日となっています。

秋分の日も近く,秋めいてきました。

そんな中,やってみたことや観戦した経験もありませんが,ラグビーワールドカップが開幕し,初戦白星の話題で持ちきりです。

熱いスポーツをするのにふさわしい季節が到来します。


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