筆跡鑑定が可能な筆跡

一般的に使用される行書体は,筆跡鑑定がほぼ可能です。楷書体は未成年者に多く見られますが,点画や筆順の確認がスムーズに行えるため,低年齢の方の文字でも鑑定を可能にします。草書体は毛筆に多く見受けられ,執筆者の癖が強く表れることが多く,鑑定できる可能性が硬筆と比べてわずかに下がります。しかし,これら三書体はいわば普通の文字なので,筆跡鑑定に支障をきたすことが少なく,鑑定不能の判断をすることは滅多にありません。
弊所では,通常の書き方ではない筆跡や,近年新たに加わった「筆記具」による筆跡の研鑽を重ねており,鑑定を行うことを可能としています。

定規で書いた文字の筆跡鑑定

定規を使用して書かれた筆跡は,怪文書などによく見られます。定規を使用することにより,曲線の運筆が困難になるため,執筆者の本来の筆跡を隠匿することや,読み手に気味の悪い思いをさせることが狙いであると思われます。
しかし,筆跡の調査では,単に形態のみを観察するものではなく,筆跡の向こう側にいる,執筆者の筆癖を見い出すことにありますので,定規で書かれた筆跡であっても,鑑定は可能なのです。

文字型定規で書いた文字の筆跡鑑定

こちらは,筆跡を作成できる,テンプレート定規による筆跡ですが,やはり怪文書に多く見られます。直線定規を使用した筆跡と異なり,曲線をきれいに書くことができ,平仮名・片仮名・漢数字・算用数字などの型があり,それなりの文章を作成することが可能であり,また短時間で筆記することができるため,比較的長文の怪文書に使われます。執筆者は,自身の筆跡を完全に隠匿することができると考え,このテンプレートを使用すると推測されます。
しかし,テンプレートで筆記した筆跡にも,わずかではありますが,執筆者の筆癖が表れてしまう部分があり,筆跡を調査することができます。また,文章を作成する場合,執筆者の言い回しや,よく使用する語句があり,「てにをは」の使い方から,起承転結に至るまで,執筆者の個性が表れていることがあるため,観察の幅を広げ,鑑定を可能とすることができるのです。

ペンタブレットで書いた署名の筆跡鑑定

近年,携帯電話の契約などで,署名を求められるときに用いられるようになった,タブレット端末に専用ペンで筆記を行った筆跡です。筆跡がタブレット端末にそのまま残るタイプでは,紙などに署名するときと同じように筆記できるため,執筆者固有の筆跡が残るようです。また,専用ペンやタブレット端末の機能も日々向上しているようで,印刷された筆跡は,紙に筆記された筆跡をコピーした程度の精細さがあります。
筆跡鑑定において,いわゆる「原本」は,タブレット端末の上に筆記した「痕跡」になりますが,筆記の瞬間に消えてしまい,また,タブレット端末は別の契約にも使用されるため,原本が保存されることはありません。従いまして,パソコン上に保存されたデータを印刷した署名などの筆跡を鑑定することになりますが,上述のように,タブレット端末と専用ペンの精度が向上していますので,データ化された筆跡でも鑑定は可能なのです。

弊所では,現在では一般的になりつつある,ペンタブレットによる署名における本人確認の精度に関して,数年前に大手通信事業者から試験的な鑑定依頼を受件しており,複数人の筆跡鑑定において鑑定精度が100%近くに達したことを踏まえ,鑑定可能であると判断しています。

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Posted by 鑑定人 田村真樹