筆跡鑑定用語集

頻繁に用いられることば

鑑定資料[かんてい-しりょう]

書いた人を,はっきりさせたい筆跡」あるいは,
「誰が書いたのかを,究明したい筆跡」のことを指します。

前者の代表は「遺言書」になります。その中でも,全文を自筆で作成する「自筆証書遺言」は,依頼件数の多い鑑定資料です。遺言書には,相続内容等に加えて「署名」がなされるため,遺言者本人の筆跡であることが前提になりますが,偽造や変造が行われる可能性が,比較的高い文書でもあるため,「書いた人を,はっきりさせたい筆跡」という位置づけになるのです。

後者の代表は「怪文書」になります。怪文書は「中傷文」や「告発文」・「投稿」・「アンケートの偽装」・「いじめに関するもの」・「落書き」などに至るまで,幅の広い鑑定資料です。怪文書には「署名」がなされないため,書いた人物がわからず「誰が書いたのかを,追求したい筆跡」という位置づけになります。
他の鑑定所では「検体資料」と呼ばれることもあります。

対照資料[たいしょう-しりょう]

「鑑定資料」が誰によって書かれたのかを究明するために,比較対照するための筆跡です。鑑定資料が,「書いた人を,はっきりさせたい筆跡」の場合は,署名されている本人の筆跡になります。また,鑑定資料が「誰が書いたのかを,追求したい筆跡」の場合は,書かれている内容などから推察される「書いたと疑わしき人物」や,時間や場所などの外部要因から思い当たる「消去法でこの人物」という方の筆跡になります。
他の鑑定所では「比較資料」や「対象資料」と呼ばれることもあります。

執筆時期[しっぴつ-じき]

「鑑定資料」や「対照資料」が,作成された日付のことを言います。記載されている日付を基本としますが,資料によっては日付の記載がないものもあるため,その筆跡が書かれたであろうおおよその日付や,「怪文書」の場合には発見された日付とすることもあります。
他の鑑定所では「筆記日付」や「記載日」と呼ばれることもあります。

書式[しょしき]

紙などの上から下へ向かって書かれるものを「縦書き」,紙などの左から右へ向かって書かれるものを「横書き」と言います。
小学生でも知っているため,このページに書くまでもないことと思われるかも知れませんが,この「書式」の違いにより,同じ人物が同じ字を書いた場合でも,書き方が変わる人もいますので,筆跡鑑定では「鑑定資料」と「対照資料」を選別される際に,留意していただいています。
他の鑑定所でも,ほとんどが同じ言葉を採用しています。

解説で用いられることば

点画の呼び方

文字の線一本一本を,一般では「点画(てんかく)」と言いますが,筆跡鑑定では「送筆画(そうひつかく)」と呼び,主に4つに分解して,解説に用います。

  • 「起筆(きひつ)」…点画の,書き始めの部分を言います。
  • 「終筆(しゅうひつ)」…点画の,書き終わりの部分を言います。
  • 「送筆(そうひつ)」…点画の,起筆から終筆までの部分を言います。
  • 「転折(てんせつ)」…点画が,折れ曲がる部分を言います。

これらは基本的な呼び方ですが,「斜めに送筆される」のように動詞として使用する場合や,それぞれに「~部」を付けて表すこともあります。

また,縦の送筆画を「縦画(じゅうかく)」,横の送筆画を「横画(おうかく)」と呼び,主に「転折」の解説に用います。
他の鑑定所では「起筆」を「始筆(しひつ)」,「終筆」を「収筆」として,呼ばれることもあります。

連続送筆[れんぞく-そうひつ]

楷書体の場合には,送筆画を一本一本分けて書きますが,行書体や草書体では送筆画を分けずに,つなげて書かれることがあり,それを「連続」した「送筆(画)」という意味で用います。
他の鑑定所では「連綿(れんめん)」や「連筆(れんぴつ)」として,呼ばれることもあります。

韜晦筆跡[とうかい-ひっせき]

「韜晦」は少し難しい読み方をしますが,「くらませる」という意味合いの言葉です。しかし筆跡鑑定で用いる意味では幅が広く,「自身の癖を隠した筆跡」から「自身の癖を隠し,他人に成りすました筆跡」までを言います。

「自身の癖を隠した筆跡」では,主に「怪文書」などで用いられる,自身が通常行わない書き方がなされる筆跡を指します。突発的に行われることが多いため,大抵は本人の癖が露呈し,見破られます。

「自身の癖を隠し,他人に成りすました筆跡」では,自身が通常行わない,他人の書き方がなされる筆跡を指します。前者に比べ高度な技術が必要となりますので,文章などの場合には,長期間にわたる訓練と,文章を作成できるだけの,真似をする人物の文字サンプルが必要となります。そのため,書かれる機会の少ない文字などで本人の癖が露呈し,見破られます。
他の鑑定所でも,ほとんどが同じ言葉を採用しています。

常同性[じょう-どう-せい]

一般的に「恒常性」と呼ばれるもので,筆跡鑑定用の造語です。
同じ人物が,同じ文字を書いたときに見られる,状態が同様の送筆画や,文字形態などに用います。
他の鑑定所では,「恒常性」や「筆跡個性」と呼ばれることもあります。

個人内変動[こじん-ない-へんどう]

「常同性」と対になる言葉です。同じ人物が,同じ文字を書いたときに見られる,状態が異なる「ブレ」を指します。主に同一送筆画に表れますが,個人差があるため,見極めるためには,座標設定や数値解析が必要となります。目視確認できるレベルであれば,図示のみで表すこともできます。
通常は「個人内変動の範囲」や「個人内変動の振幅」など,その大きさの程度を表現する際に用います。
他の鑑定所でも,ほとんどが同じ言葉を採用しています。

経年変化[けいねん-へんか]

言葉の通り,時間がたつごとの筆跡の変化です。おおよその人は,10代後半から70代くらいまで,外部要因を除き,筆跡が大きく変化することはありません。しかし,小さくは変化します。例えば,学生時代と社会人になってからの筆跡や,職種や役職の違い,パソコンの使用頻度と筆記具離れ,婚姻による姓の変化など,自身も気づかぬうちに,時間の経過とともにわずかずつ変化します。
これも「個人内変動」と同じで個人差があるため,時系列に沿った文字の観察が必要となります。
ここまで読むと「経年変化」=「必ず変化が現れるもの」のみの観察と思われがちですが,「経年変化が発生しない」箇所についても観察を行い,「常同性」よりも強固な「個人の筆跡特性」として位置づけて,鑑定を行います。
他の鑑定所でも,ほとんどが同じ言葉を採用しています。

そのほかの,用語解説が必要なときは

日本筆跡鑑定協会

日本筆跡鑑定協会では,上記の用語を含め,あらゆる鑑定用語をまとめ,PDFファイルとしてホームページ上に掲載しています。
[日本筆跡鑑定協会 鑑定用語集のページ]

田村鑑定調査では

報告書の内容に応じて「鑑定用語のページ」を掲載し,それらを参考にしながら,報告書を読むことができる取り組みをしています。


 

2017-12-11