特殊鑑定|赤外線透過検査|画像復元

赤外線透過撮影や画像復元による特殊鑑定

特殊鑑定とは

弊所では,筆跡鑑定を行うことができない状態の書類に対し,赤外線透過撮影が可能なカメラやマイクロスコープを使い,通常では見ることができない文字などを可視化したり,画像修整によりゆがんだ画像を復元したりする技術を培っています。
そうした特殊事例の鑑定を総合的に行うものを「特殊鑑定」と呼んでいます。

赤外線カメラによる写真撮影:特殊鑑定
文化財などの古物は,赤外線カメラで撮影することによ,どのような文字等が書かれていたのかを知ることができます。 上図は「PENTAX KP-IR」をPCソフト「イメージトランスミッター2」でピント調整を行い,文化財を撮影している様子。

筆跡や画像の特殊鑑定

  • 消してしまった鉛筆痕から文字を読み取る。
  • 黒塗りされた筆跡を可視化して筆跡鑑定を行う。
  • 答案用紙の鉛筆と赤ペンのどちらが先であるかを調べる。
  • 活字で作成された怪文書を,誰が作成したのかを調べる。
  • 過去に書いたとされる筆跡と,当時の真正な筆跡との整合性を調査する。

赤外線透過撮影や画像修整等による可視化,語句分解による作成者の割り出し等,様々な特殊調査を行います。

その他の特殊鑑定

  • 紙に書かれた文字が左右どちらの手で執筆された筆跡かを調べる。
  • 古い戸籍謄本などの判読が困難な文字を調べる。

他の調査会社が行わない掌紋抽出検査や難解文字判読調査などにも対応しています。

ご相談の数だけ内容も多岐にわたりまが,あらゆる問題に真剣に取り組みますので,どんなお悩みでもご相談ください。また,鑑定費用についてのご相談も承ります。「裁判で鑑定書が必要だけど予算が…」というような方もご安心ください。弊所ではご予算に応じながら,要所を押さえた的確な鑑定書の作成も行っております。

特殊鑑定は偽造を見破る技術でもあります

当研究所では,遺言書や契約書の筆跡や印鑑が,本物か否かを見破る研究を行っています。

加筆を見分ける

加筆改ざんは珍しいことではありません。
数字の1を9にしたり,一を別の漢数字にしたりすることは,原本が目の前にあれば容易に行えます。しかし,これを見破るにはいくつかの方法を試みる必要があり,難易度も高いため,調査には訓練と経験が必要です。

赤外線でボールペンの透過性の違いを調べる

遺言書や領収証などはボールペンで書かれることが多く,遺言書への加筆や,領収証の金額数字の改ざんなどが疑われる場合に,赤外線透過検査を行うことにより,不自然な加筆痕を見つけたり,金額改ざんなどを見破ったりすることができます。原本が必要であり万能ではありませんが,成功した場合は動かぬ証拠として撮影します。

文字の線の幅を測定して,筆記具の違いを調べる

筆跡には筆記具に固有の線の幅があります。ボールペンの0.5㎜や0.7㎜などの規格もその一つですが,この幅を専用の器材とソフトを使用して測定し,筆記具に違いがあるかを調査します。これまでに判明した例では,遺言書の中に空行があり,そこに遺言書の他の部分とは異なる幅のボールペンで加筆されていたというもので,通常の筆跡鑑定でも遺言者の筆跡ではないという結果が出ました。

加筆改ざんは古典的な手法ですが,衝動的な考えにより安直に行われる背景があります。

赤外線機材による透過検査

田村鑑定調査では赤外線を使用した検査を行っており,機材は赤外線スキャナー・赤外線マイクロスコープ・赤外線デジタルカメラの3機です。赤外線は印刷物やペンのインクを透過する性質があるため,筆跡鑑定では主に「加筆」の判断に使用します。

赤外線透過撮影用カメラ

赤外線撮影用機材-田村鑑定調査2020
赤外線撮影用機材や接写撮影用機材など。
赤外線撮影用カメラPENTAX KP-IR:田村鑑定調査
赤外線撮影には,PENTAX KP-IRを使用しています。

赤外線撮影では以下のように波長が異なる赤外線の撮影が可能です。

富士フィルム製 NEEWER製 リコー製
IR-76(760nm) IR720(720nm) IR840(840nm)
IR-78(780nm) IR760(760nm)
IR-80(800nm) IR850(850nm)
IR-82(820nm) IR950(950nm)
IR-84(840nm)
IR-86(860nm)
IR-88(880nm)
IR-90(900nm)
IR-96(960nm)

赤外線透過スキャナー

下図は領収証のサンプルです。金額は¥88,869-と書かれています。サンプルのため少々金額に無理がありますが,赤外線を通した真の姿はどうなるでしょうか。

特殊鑑定における領収証の観察
通常のスキャニング画像

ちなみに,赤外線調査が可能な書類は「原本のみ」になりますのでご注意ください。

特殊鑑定における赤外線スキャナーによる領収証の透過検査イメージ
赤外線透過スキャナーの画像

赤外線スキャナーでスキャニングした結果です。領収証として印刷された部分や,印鑑の朱肉は赤外線を透過する性質のインクであるため見えない状態になっています。
金額欄を見ると¥33,000-と書かれており,領収証を筆記したペンとは違うペンで,後から加筆され¥88,869-に改ざんされたことがわかりました。

赤外線機材による観察により,目視ではわからない本当の姿を知ることができ,加筆された部分の筆跡鑑定を行うこともあります。

赤外線透過マイクロスコープ

下記の画像は通常LEDライトで撮影したマイクロスコープの画像です。重ね書きされていますが0.48mlと読むことができます。

通常LEDライトのマイクロスコープ画像
通常LEDライトのマイクロスコープ画像 0.48mlと読むことができる。

上図を赤外線透過撮影ができるマイクロスコープで撮影すると以下のようになります。

赤外線LEDライトのマイクロスコープ画像
赤外線LEDライトのマイクロスコープ画像 0.6mlと読むことができる。

このように,最初は「0.6ml」と書かれた文字が,「0.48ml」に書き換えられたことがわかります。

赤外線透過撮影ではマイクロスコープで観察するような小さなものから,カメラで撮影する以外に方法のないA3以上の紙面や立体物まで幅広い調査を行うことが可能です。
また,固定されていて動かせないものや,持ち出しが困難な文化財などの場合は現地へ赴いて調査することも可能ですのでご相談ください。

画像補整による可視化

印刷された内容や,文字が書かれた箇所の上から,油性ペンなどで黒塗りされた書類に対し,田村鑑定調査では,長年培ってきた画像補整技術を応用し,可視化することができます。
左下図は便せんに書かれた文字を油性ペンで黒塗りした画像です。原本であれば,光の加減で書いてある内容を読むこともできますが,第三者も同じように読めなくては内容の確認が取れず,証明することもできません。
この原本を画像補整して,可視化できるようにした状態が右下図です。ここでは縮小して掲載しているため,読みづらい箇所もありますが,筆跡鑑定にも十分に耐えうる,鮮明な状態で復元されています。

特殊鑑定における,筆跡部分を黒塗りされた書類のイメージ特殊鑑定における画像補整後の筆跡イメージ

語句分解による,執筆者の系統割り出し

ご相談いただく内容の中には,書字(人が書いた文字)ではなく,活字(印刷物)に関するお問合せもいただきます。
書字の場合には「筆跡鑑定」を行い,執筆者の特定をすることが可能ですが,活字の場合,筆跡鑑定は役に立ちません。それでも「作成者が誰なのかを調べたい」というお声から,田村鑑定調査では,それを探る方法として鑑定資料の語句を分解し,その出現頻度や言い回しなどを調べ,対照資料との突合を行い,作成者の系統割り出しを行っています。これは人が文章を作成する場合には,書字・活字の区別なく,作成者の固有パターンが存在すると考えられているからです。
下図は,語句分解を行った,一覧表のイメージです。これらの作業を通じて,作成者を特定する手掛かりとしています。

特殊鑑定における語句分解表のイメージ

問題解決のために特殊鑑定に取り組みます

筆跡鑑定から始まった田村鑑定調査ですが,長い月日の中でご相談いただいた「お悩み」の「問題解決」を第一に考え,真剣に取り組んできたものが,数々の検査を生み出しました。ご紹介したものは一部ですが,お客様が抱えているお悩みを解決する手段が,田村鑑定調査にあるかも知れません。問題解決の第一歩として,まずはそのお悩みを,田村鑑定調査にお話しください。


 

Posted by 鑑定人 田村真樹