2018.9.21-筆跡鑑定と筆記具の相性

筆跡試料作成2018

筆跡鑑定では筆記具の特定が重要

筆跡鑑定の精度を上げるため,鑑定人を職業とする者は筆跡の研究が欠かせないのですが,筆記具の研究を行っている鑑定人が意外と少ないことに驚きます。
とある鑑定書で,それを作成した鑑定人は鉛筆書きの筆跡を,「フェルトペンで書かれている」と記述していて,代理人弁護士も準備書面の中で鑑定人と同じように記述していたので,鑑定が行われた書類をキチンと見ていないのかな。と,鑑定書を読む前からいぶかしく思います。
そうした鑑定書は往々にして,記述内容がずさんであったり,掲載すべき画像が抜けていたり,結論があいまいであったりと,反論する気が起らないようなお粗末なものが多く見られます。

筆跡鑑定では,筆記具の傾向を統一させる

私が筆跡鑑定の依頼を受ける際に,お客様へ申し上げていることの一つに「同じ筆記具で書かれたものをご用意ください。」というものがあります。同じ筆記具といっても全く同じペンを見つけてください。というものではなく,鑑定を行う書類がボールペンで書かれていれば,比較対照する筆跡もボールペンで書かれた書類をお探しいただく,というものです。

とある鑑定書で,硬筆と毛筆を比較鑑定し,結果を「断定」しているものを見たことがありますが,硬筆と毛筆では筆運びや書体が異なるため,鑑定に使用できる筆跡が他にない場合を除き,本来は比較すべきではありません。

筆跡鑑定では,比較対照する筆記具をできる限り統一することが,鑑定精度の向上に繋がります。

そうした鑑定に自身がかかわったとき,「同じ筆記具で書かれた書類はありませんか。」と問い合わせると,ご提出いただけることがあり,とある鑑定人が筆記具にこだわっていないことがわかり,鑑定内容もいわんや。といったものです。

同じ人間でも筆記具が変わると筆跡が変化する

毛筆を書き慣れていない人にとって,毛筆で文字を書くことは苦痛であり,書いた字を見られることは恥ずかしいものです。逆に,毛筆は達筆でも,硬筆になるとそうでもないという方もいて,筆記具によって得手・不得手や,上手・下手などが分かれることは,一般的にも了解されていることです。

筆跡鑑定を通じて検証すると,筆記具が変わることにより,たとえ同じ人間が書いた筆跡でも変化することがあり,また,その程度も個人差があるという発見があります。

筆跡鑑定は筆記具の相性を重視する

硬筆でも,ボールペンと鉛筆では紙の上の「滑り」が異なりますし,フェルトペンなどの場合は,先端が繊維質であるため紙に対する抵抗が強く「引っかかる」ような感覚があります。日常的に身の回りにある筆記具は,毛筆以外にも書き心地が変化しますので,「使い慣れた筆記具」と「不慣れな筆記具」を意識している人も少なくありません。

筆跡鑑定に影響を及ぼすのは,特定の文書が,普段使わない筆記具で書かれている場合です。特定の文書と比較対照する書類に,普段使わない筆記具で書かれた筆跡がないことがあり,それは執筆者が普段使い慣れていない筆記具であることを裏付けるものであり,よって,筆跡に変化が生じている可能性があるからです。鑑定人泣かせな案件です。

そうした事情から,筆跡鑑定は筆記具の相性を重視する必要があり,お客様にはお手数をおかけしているのです。

筆跡試料の作成-75回目

2018.09.21筆跡試料の作成

気が付けば,秋のお彼岸。暑さ寒さも彼岸まで。日が短くなった気がしています。


最後までお読みいただき,ありがとうございました。