2018.7.11-筆跡鑑定の精度を上げる条件

筆跡試料作成2018

筆跡試料の作成-66回目

このたびの西日本豪雨災害におきまして,お亡くなりになられた方とご遺族,また被災された方に謹んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。一日も早い復興をお祈り申し上げます。

2018.07.11筆跡試料の作成

筆跡鑑定の精度を上げて,確度の高い鑑定結果を得る方法

筆跡鑑定の依頼を検討中の方の興味は,鑑定結果がどのようになるのかが一番であり,御自身の思うような結果であることが大事かと思いますが,筆跡鑑定はそろえていただく筆跡資料により,結果に影響を与えるだけでなく,筆跡鑑定の精度や鑑定結果の確度にまで影響を及ぼします。
つまり,筆跡鑑定の精度を握るのは,依頼主であるお客様なのです。今回は,筆跡鑑定のお問い合わせの際に,お客様に必ず申し上げる4つの重要なことをお伝えしたいと思います。

筆跡鑑定で重要なのは,書類が原本であること

最近のコピー機は精密な複写を可能としており,ひと目見ただけでは原本かカラーコピーか判別できないものもあり,文字の形態や書かれ方を観察して筆跡鑑定は行われますので,コピーであっても,おおよその範囲の鑑定は可能です。
しかし,コピーでは筆圧や筆順などの検証ができないことが多く,また,スキャニング偽造を見破ることも困難になります。
こうした事情から,筆跡鑑定で最も重要なことは,その筆跡が原本であるということになります。

筆跡鑑定の執筆時期は「サンドウィッチ」が好適

私はよく,お問い合わせいただいたお客様に対し,筆跡鑑定する書類の日付に対し,過去と未来の日付の対照書類を用意して時系列で挟み込むことを,料理に例えて「サンドウィッチ」と説明しています。
そういった状況を作り筆跡鑑定を行うことにより,問題となっている書類の筆跡が,対象者の時系列順に並べた筆跡とマッチするか否かを浮き彫りにすることができ,筆跡鑑定の確度を一層引き上げることができます。

筆記具や書式は,筆跡鑑定で欠かせない要素

硬筆に対し硬筆を対照する,毛筆に対して毛筆を対照するなど,筆記具を合せることは筆跡鑑定を行う上でとても大切です。当研究所では筆記具を,鉛筆,ボールペン,毛筆,万年筆,ファイバーチップペン,硬質インクペンの6種類に分類して筆跡を研究います。
このうち,鉛筆から万年筆までは日常的に使われている言葉ですから説明は省きますが,ペン先が繊維質のプラスチックのような物質でインクがにじみだしてくるタイプの筆記具が「ファイバーチップペン」。ペン先がガラス製のものや鳥の羽,竹製の物など,漫画家や画家さんが使う筆記具を「硬筆インクペン」と呼んでいます。

ちなみに「ファイバーチップペン」というネーミングは,和田哲哉さんの著書『文房具を楽しく使う‐筆記具編』(2005)早川書房刊からお借りしています。
「ファイバーチップペン」は,持ち物に名前を書くことに使われたり,教科書にマーカーをしたりすることによく使われている筆記具ですが,容易に想像できるあのペンの名前は商標登録されていて,むやみに表記できないため,「ファイバーチップペン」という呼称を使わせていただいております。

書式とは,縦書きや横書きを指します。当研究所では,筆跡鑑定の際に文字を一つずつ鑑定するのですが,それとは別に,名前や住所などの固有名詞を「文字列」としても鑑定するため,横書きで書かれた名前の文字列どうしを比較するために,筆跡鑑定の精度を高める要素の一つとしています。

契約書には契約書など,書類の性質を合わせて筆跡鑑定する

遺言書を筆跡鑑定する場合,どのような書類を対照資料として選定することが望ましいのか。正解は「日付の近い遺言書」となります。しかし,遺言書はそうそう執筆するものではないため対照資料として用意できることは稀です。
筆跡鑑定を行うには,鑑定する書類と同様の書類を用意して,その筆跡を比較対照することが望ましいのですが,それは,便箋には便箋を比較対照する,といったように書類を合わせて,その書類にどのような書き方がされているのかといった俯瞰した観察を通じて,異同の判断につなげることができるからです。

なお,遺言書と比較対照する書類の最適解は「日付の近い手紙文」です。


以上です。最後までお読みいただき,ありがとうございます。