実印・法人印の真贋を鑑定

印章鑑定の現状

印影は,筆跡と異なり,いつでも同じ形状になることを目的として作られ,それを持つ者を,本人であると証することができ,日本では重要書類に押印が求められます。
かつて,印影の偽造を行う場合,印章から偽造する必要があり,印章を作成することは,素人にはほぼ不可能な技能であり,また印章の彫刻師でも,印影から印章を作成することは容易ではないため,これまでは,スーパーインポーズによる画像の重ね合わせを基本とした鑑定方法で,真贋の見極めが有効でした。
しかし,現代においては,パソコンやプリンター機器の発展と普及により,安直に偽造が行える環境が,各家庭レベルに存在し,若干の知識と環境があれば,誰でも簡単に偽造印影を作り出せるようになりました。
当研究所でも主に,印章鑑定の場合には,スーパーインポーズを使用した鑑定方法を採用していますが,それだけで真贋の判断を行うのは不十分であり,印影がどのような状態であるのかを,詳しく観察する必要があると考えます。

スーパーインポーズの解説画像

これからの印章鑑定

印影を,原本とコピーに分類し,細かく観察します。

印影の原本印影のレーザーコピー印影のインクジェットコピー

上図は左から,原本印影,原本印影のレーザーカラー複合機によるコピー印影と,インクジェットプリンターによるカラーコピー印影です。元は一つの印影ですが,原本印影と比較して,コピー印影は,文字線画の色合いやざらつき感が異なることがお分かりいただけるかと思います。
印影のある書類については,手に取り観察すれば,印影が原本かコピーかの判断ができるものもありますが,弊所では目視のみに頼らず,必ずマイクロスコープによる観察を行います。それは,原本かコピーかの判断のほか,鑑定を行う上で重要なポイントを観察する目的があるからです。
日本では現在,レーザープリンターとインクジェットプリンターが主流のプリンターであるため,弊所ではこの2機種において考察を深めていますが,その理由は,印章鑑定を依頼される方のほとんどが,書類のコピーしか持たず,原本を使った鑑定がかなわないためです。

拡大観察が重要。

印影のレーザーコピー拡大図レーザーコピー偽造印影の拡大図
※左図:レーザーコピーの拡大画像,右図:レーザーコピーを使用した偽造印影の拡大画像

インクジェット印影の拡大図インクジェットコピー偽造印影の拡大図
※左図:インクジェットコピーの拡大画像,右図:インクジェットコピーを使用した偽造印影の拡大画像

印影を拡大観察することにより得られる情報は,鑑定結果に重大な影響を及ぼすことがあります。
上図は,印影をコピーした画像と,偽造印影を拡大した画像です。その違いは,様々なところに現れるのですが,肉眼はもとより,拡大鏡を覗いた程度では決して観察することができません。


印影サンプルを生かし,鑑定印影を比較観察します。

弊所では,これまでのスーパーインポーズを使用した印章鑑定に加え,10種類を超えるサンプルによる鑑定印影の分類を偽造の判断に応用しており,多角的な観察内容は以下の報告書に集約されます。

印章鑑定書(本鑑定)

印章鑑定は,印章=印鑑(ハンコ)の有無により,本鑑定と簡易鑑定に分かれます。
印章がある場合には,本鑑定である「印章鑑定書」の作成が可能です。これは印章そのものの計測やスキャニングを行い,直接押印した印影と,鑑定印影との比較を行います。サンプルデータとの比較と合わせ,精密な鑑定が行えるため,これまで,印章の所持人でも気づかなかった印影の特徴が発見されることもあり,鑑定印影の偽造を見破ることができた実例もあります。
[ 所要日数 3日~7日程度 ]

簡易印章鑑定書

印章(印鑑)がお手元にない場合は,鑑定印影に対し,印鑑登録証明書の印影や,信頼できる書類から得られる印影を対照印影として比較鑑定を行い,同時にサンプルデータとの比較も併せて行います。
また,印章をお手元にお持ちでも,貸し出しができない方や,手放したくないという方のご利用も,近年増加しています。
[ 所要日数 1日~2日程度 ]

筆跡・印章鑑定報告書

「筆跡と印章の報告書を,セットで作成してほしい」とのご要望にお応えして,2016年に導入いたしました。
報告書の内容は,筆跡鑑定は,「筆跡異同診断書(基本報告)」の内容で作成し,印章に関しては「簡易印章鑑定書」の内容で作成します。鑑定作業は100%行いますので「本鑑定」に移行しても,結果が変わることはありません。
[ 所要日数 5日~ ]


 

2017-06-30