領収証の偽装を筆跡鑑定で見破る

領収書偽装による数百万円の着服を筆跡鑑定で解明

これは決して大げさな数字ではなく,実際に当研究所で筆跡鑑定や赤外線調査など複数のご依頼をいただいた大手法人様で明らかとなった例です。
数年間にわたり領収証偽装を行い,さかのぼれるところまで調べて二百数十万円でしたので,対象者の社員歴を考えると更に金額は上がると考えられます。
バブル景気を体験した年代の方で,社内ではパワハラ・セクハラのオンパレードでしたが,営業成績が良く自身のチームを持ち,部下を引っ張る実力者であったため,誰も手出しをできず放置されたままだったとのことです。外資が入り役員人事が一掃されてこれまでのしがらみがなくなり,コストカットの見直しによりあぶりだされたといういきさつがあります。

この事例のように,領収証偽装は発覚するまでに時間がかかる傾向にあります。

金銭の授受は,個人・法人を問わず,日常行われ,領収証が発行されています。この領収証を偽装し,実際に支払われた金額より多くの金銭を請求するケースがあり,それらを「領収証偽装」と呼んでいます。領収証の偽装は,大きく分けて2つに分類されます。
ひとつは,金額欄に加筆を行い,数字を変えてしまう方法です。「1」を「7」や「9」に変えたり,「3」を「8」に変造するものや,記入されていない桁に,数字を書き足すものなど,方法は様々です。
二つ目は,領収証全体を偽造してしまうものです。近年では通信販売で,安価に社判(店判)が制作でき,実態調査などは行われないため,誰でも簡単に,無関係の店舗などのはんこを手に入れることができてしまいます。また,領収証の大半は,大手メーカーの普及品が使用され,簡単に入手できる背景もあり,「偽造してみよう」という安易な発想を,具現化することが容易に行えてしまう環境があります。
領収証偽装に対する筆跡鑑定のご相談は,年間に数件と,決して多くはありませんが,1案件ごとに枚数が多く,100枚を超えることも珍しくありません。それがさらに数年分となりますので,筆跡鑑定にも時間がかかるのです。

経理部門のささやかな気付きから,筆跡鑑定へつながる

「照明器具がLEDに交換されて部屋全体が明るくなり,領収証の金額欄に黒ボールペンで書かれた数字の「照り」が異なる文字があることに気づき,さかのぼって調べたらインクの「照り」が異なる領収証がたくさん出てきた。」
経理部門の方のささやかな気付きは,監査室室長へ話が上がり,顧問弁護士との協議を経て筆跡鑑定へとつながりました。この一連の流れはわずか10日足らずでしたが,対照となる領収証は保存期限の限度となる7年前までさかのぼっても余り,それ以前から行われていたことを示唆するに十分な量がありました。

これまでに筆跡鑑定の依頼があった案件は,経理部門の方の眼力によるものがほとんどであり,領収証偽装が安易に行えてしまう環境を思料すると,領収証偽装は至る所で潜在的に横行していることが予想され,また,発覚するまで長い間気付かれずに放置されている可能性も高く,長期的に経営を圧迫していることにも繋がります。
鑑定を行う場合「疑わしい人物」は,領収証を経理部などに提出した人物が最初に浮かび,濃厚でもありますが,経理部に届くまでに数人を経由している場合もあり,対象者の選抜を的確に行い,適切な対照資料をそろえないと,冤罪を生む危険もありますので,細心の注意が必要です。

鑑定方法は大きく分けて二通り

加筆の有無を調べる

領収証偽装のうち,加筆を行った偽装の場合には,領収証の原本が必要です。赤外線調査を通して,同じタイプのボールペンが使用されているかなどを主に検査します。
領収証が複写式(カーボンコピー)の場合でも,鑑定は可能です。こちらは赤外線調査を行えませんが,マイクロスコープ検査が行えますので,原本を御用意ください。

完全偽造を調べる

領収証全体を偽造した場合には,疑わしい人物との筆跡鑑定を行います。こちらは通常の鑑定作業となりますので,疑義のある領収証と,疑わしい人物が書いた算用数字などのサンプルを御用意ください。
対照資料を選ぶ際の注意点は,このほかにもございますが,案件ごとに異なりますので,鑑定をお考えの方は事前にお問い合わせください。

社内で冤罪を生まないために

領収証偽装の鑑定は,対照する人物が,社員などの関係者が大半であるため,比較的容易に筆跡資料を収集できるかと思います。しかし,誤った鑑定により,疑われた方や,ご家族などに影響を及ぼすこともあります。また,対象者が多数の場合,鑑定が徒労に終わることも少なくありません。
「白黒をつける」ことも重要ですが,「冤罪を作らない」ことも視野に入れて,的確な資料で,精度の高い,確かな鑑定結果をお求めください。

 

2016-10-03