筆跡の鑑定手法

筆跡鑑定は3つの鑑定手法から結果を導き出します。

1.伝統的な筆跡鑑定

第一の観点は,筆跡を大別して5項目,詳細にして約50項目からなる要素により,比較分析を行い,異同の判断を行います。一般に「伝統的な筆跡鑑定」と呼ばれる作業に当たります。
これは,一人の人間が書いた,同じ文字の中に表れる「書き癖」を明らかにして,鑑定を行う対照の筆跡から同じ文字を探し,その書き癖を見い出して比較鑑定を行いますが,文字の送筆画(点画)を一本一角つぶさに観察し,起筆(書き始め)・送筆(途中)・終筆(書き終わり)の状態や,転折(曲がる部分)・接画(線と線がつながる様子)・連続送筆(続け書き)・気宇(偏と旁の間隔)の広狭状態など…「葉」から「森」までを観察するように,詳細に比較観察する作業です。専門的には,「書き癖」を「常同性」と呼び,常同性を伴う異同の判断を行うことを指します。
伝統的筆跡鑑定の観察点
※上図はイメージ。比較対象するポイントは,文字の数に応じただけあると考えます。

2.計測的な筆跡鑑定

第二の観点は,文字の送筆画の長さや,転折の角度・空白の面積・偏と旁の大きさなど,計測できるものを数値に置き換え,比較観察する作業です。「計測的な筆跡鑑定」と呼んでいます。

文字は,同じ人物であっても,書くたびに大きさや形が若干変化します。これは,罫線のあるノートや,原稿用紙に文字を書くときと,無地の紙に文字を書くときなどでは,執筆制限のかかり方が変わるためです。「執筆制限」とは,「枠内に収まるように書かなければならない。」といったものや「文字列をまっすぐに書こう。」というような,意識の有無にかかわらず起きる現象のようなもので,書字能力のある方なら,日常的に受ける制限です。
そのため,異なる書類に書かれた筆跡の大きさ等を,単純に比較しても無意味であるため,各書類内での比率計算を行い,異なる書類間の比率を比較する必要があるのです。

「な」字第1画・第3画長さ計測「な」字第1画・第3画長さ計測2
※送筆画の計測の様子。ここで得た送筆画の長さを比率計算に使用します。

数値の計測や計算及び解析は,客観性や透明性,公平性が必要な筆跡鑑定に不可欠な観点となります。弊所では,上記に代表される,第三者の検証が可能な鑑定方法を採用しており,これらを含む計測と検証を経て,鑑定結果の根拠を導き出していますが,鑑定書に記載する際には,解説内容の必要に合わせて,図解を掲載しているため,全ての解説に付随するものではありません。

3.科学的な筆跡鑑定

第三の観点は,筆圧の状況を,特殊な技法を用いて可視化する「画像補整技術」による鑑定です。筆圧の程度が同様であるか否かを比較し,異同の判断に加えます。原本資料が必要であり,筆記具等により観察作業の可否がありますが,可能な限り判断に加えています。

筆圧の画像補整観察のサンプル
※同一人が執筆した文字列の例。筆圧の強弱を観察し,異同の判断材料に加えることがあります。

このほかにも,鑑定結果を決定する観点は無数に存在するため,田村鑑定調査ではこれらの観点を総合して,最終結果を導き出しています。


 

2017-06-21