筆跡鑑定報告書の特長と内容

お客様の用途に合わせた報告書の作成

筆跡鑑定をご依頼されるお客様は,裁判資料が必要な弁護士様から,社内調査用の法人様,相続や生活に直結したお悩みを持つ個人様といろいろな方がいらっしゃいます。弊所ではお客様の用途に合わせて,報告書をカテゴリ別に分類し,ご予算内に見合うように作成しています。

客観性の高い,筆跡データを提示

裁判所が推奨する鑑定書は,中立・公正な立場で,主観に頼らない客観的な鑑定方法が求められます。
弊所では,筆跡異同診断書から上位の報告書において,筆跡鑑定を行った書類の作成時期が,どのくらい離れているのかといったかい離状況のデータや,書類に執筆されている文字の数量と,その回数のデータ等を掲載しています。
こうしたデータがなぜ必要になるかというと,鑑定を行う書類と比較する書類から,形が似ている文字を優先的に選んだり,あるいは、年代が離れている書類から,書き方が変わってしまっている文字をあえて抜き出すなどして,強引な鑑定結果を導くことができないようにするためです。
お客様をはじめ鑑定人も,鑑定結果の操作ができないように,公平な鑑定作業が行われるようにと,弊所では中立な立場で取り組み続けています。

グラフィックを多用した解説

下記にも記述していますが,筆跡鑑定はいわば筆跡を「目で見て判断」している訳ですから「どのように見えているのか」といった解説を行うことになります。しかし,いくら優れた文章でも,読者によって受け取り方は様々。それは小説家と読者が,映画化された小説を観たときの印象が異なるように,当然のものといえます。
小説であれば,それも楽しみ方の一つとなるでしょうが,筆跡鑑定書では,受け取り方が異なってしまっては,解説の重要な部分が変わってしまうことも懸念されるため,あまり良い状況とは言えませんし,専門用語が多い,たくさんの文章を読むのは骨が折れるものです。
そこで弊所では,業界でもいち早くグラフィックを数多く掲載した図解を導入しています。もちろん文章による解説も行いますが,直感的にご理解いただけるよう,主に筆跡鑑定書の解説ページに取り入れています。

筆跡データベースの活用

文字は,どなたが書いても同じようになる箇所があります。それは「あ」という平仮名は,どなたが書いても「あ」と読めなくてはならないからであり,普遍的な特性を持つ意思疎通の手段になり得ている所以でもあります。
文字を書く際に表れる,ある程度確かな事柄がなければ,私が書いた「あ」は,誰にも読めず,意思疎通の手段として,文字は使用できなくなります。
弊所では「文字を書く際に表れる,ある程度確かな事柄」を「書字行動の蓋然的な事象」と定義しています。書字行動とは「文字を書く行為」のことで,蓋然的というのは「ある程度確かであるさま」,事象は「表面に現れた事柄」というような意味合いがあります。
この判断に欠かせないが,筆跡データベースです。鑑定している文字の観察部分が,書字行動の蓋然的な事象であるのか否かという判断は,複数の人間が書いた文字から探るしかなく,大量のサンプルが必要となり,そのために筆跡鑑定で得られた「生きた文字」が必要となるのです。
まれに,書字行動の蓋然的な事象のみを取り上げて,「筆跡が同一」という鑑定結果を出している鑑定人を見かけますが,検証が足りているのかという疑問が湧きます。
弊所では開設当初から筆跡鑑定用のデータベースを作成し,書字行動の蓋然的な事象の判断や,希少性の判断などに活用し,十分な検証を経た鑑定結果を導き出しています。

初期鑑定の報告書では,要点の解説を優先しています。

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初期鑑定の段階では,お客様ご自身が思ったとおりの結果であるのか,それとも異なる見解があるのかといったことが明らかとなりますが,弊所では初期鑑定の段階から,鑑定に使用した文字の一部を掲載し,解説を行います。

筆跡異同診断書では,要点解説+鑑定データを掲載しています。

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筆跡は,人の手によって残されるため,書かれた日付というものが必ずあります。これを執筆時期といい,筆跡鑑定行う場合,執筆者が不明な筆跡である「鑑定資料」と,執筆者が明確な筆跡である「対照資料」の執筆時期が,どの程度離れているかを知る必要があります。なぜなら,鑑定結果に都合のよい対照資料を優先的に採用することなく,時系列に沿った客観的な鑑定を行うためです。
弊所では執筆時期のかい離状況を,一日単位まで正確に明らかにし,鑑定資料の日付に近い対照資料から,優先的に鑑定を行い,客観性を確保しています。資料番号付与表(左上図)は,筆跡異同診断書から添付される鑑定データですが,弊所では2011年より採用し,公平性と透明性を,報告書に持たせています。
また鑑定作業では,鑑定資料と対照資料に,共通して執筆されている文字の数量と,執筆回数をカウントし,鑑定資料と対照資料の両方で,最も多く執筆されている文字を優先的に鑑定しています。これも,鑑定結果に都合のよい文字を優先的に採用せず,客観性を確保するために行いますが,漢字・平仮名・片仮名・算用数字・ラテン文字・記号の6文字種を余すことなく集計することにより,執筆者が無意識のうちに選択している文字種まで,幅広く観察することができ,執筆者特有の傾向把握が可能となるからです。
弊所では2007年からこの作業を採用し,筆跡異同診断書では,共通漢字集計表(右上図)を鑑定データとして掲載しています。

鑑定書はグラフィックを多用し,「読む」から「見る」へ。

これまでの筆跡鑑定書は,筆跡の画像を掲載して,その解説を並行して行うというものでしたが,筆順を追って解説するため,画数の多い文字では,読み手の方に混乱を生じさせたり,途中でどの部分のことを読んでいるのか,わからなくなったりというストレスが生じるなど,鑑定用語を簡素にしても,矢印で指摘しても,「わかりやすい」と感じていただくには,及ばない状況でした。

現在の筆跡鑑定書は,こうした状況を是正すべく,弊所では筆跡鑑定業界でもいち早く,グラフィックを導入した鑑定書の作成を開始。送筆画の長さの違いや,送筆画度の表示,筆順の表示,交差する送筆画の角度表示などにグラフィックを導入し,一目で判読できるように,可能な限り心がけて作成しています。

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※上図は,送筆画の長さの違いを,グラフィックで表現した例です。解説はほとんど必要ありません。

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※上図は,送筆画度にグラフィックを用いた例です。第三者の検証が可能なように,分度器を使用します。

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※上図は,筆順の違いを,グラフィックを使い表現した例です。解説はシンプルにまとめています。

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※上図は,交差する送筆画の角度の違いを,グラフィックで表現した例です。解説はほとんど要りません。

このほかにも,文字列の解説ではグラフィックによる表現が欠かせません。

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※上図は,固有名詞の観察に,「仮想枠線」を使用したグラフィックの実例です。

筆跡鑑定は,ご依頼のたびに鑑定を行う文字が変わるため,筆跡鑑定書の内容や掲載する文字,解説の仕方もその都度変わります。弊所では1件ごとに,鑑定結果に見合ったグラフィックの使用と,解説を織り交ぜ,「わかりやすい鑑定書」の作成に研鑽を重ねています。


 

2017-06-21