認知症の進行と手続記憶の喪失
認知症の進行と手続記憶の喪失について
手続記憶は、文字を書く、自転車に乗る、箸を使う、楽器を演奏するなど、意識的な想起を必要としない技能や習慣に関する記憶です。
認知症の進行に伴い、様々な記憶が影響を受けますが、手続記憶は比較的遅い段階まで保たれることが多いとされています。しかし、病状が進行すると、手続記憶も徐々に失われていくことがあります。
認知症の進行と様々な記憶の喪失にはどのようなものがあるのでしょうか。
認知症の進行と記憶の変化
- 初期: 認知症の初期には、新しいことを覚える短期記憶や、いつどこで何があったかというエピソード記憶が影響を受けやすいです。
- 中期: 病状が進行すると、言葉の意味や物の知識といった意味記憶も徐々に失われていきます。
- 後期: 認知症の後期になると、手続記憶も影響を受け始め、以前は無意識にできていた日常的な動作が困難になることがあります。
手続記憶が比較的保たれる理由
手続記憶は、大脳皮質だけでなく、小脳や基底核といった脳のより深い部分に広く分散して保存されていると考えられています。認知症による脳の損傷が、これらの領域にまで広がるには時間がかかるため、比較的遅い段階まで保たれることがあります。
手続記憶の喪失の現れ方
- 文章や文字を書くことが困難になる。画数の多い漢字をうまく書くことができなくなる。
- 以前は簡単に行えていた料理、着替え、歯磨きなどの日常動作の手順が分からなくなる。
- 趣味や特技として長年行ってきたこと(例:編み物、絵を描く、楽器演奏)ができなくなる。
- 歩行や姿勢の維持が困難になる。
重要な注意点
- 認知症の種類や進行度合いによって、記憶の障害の現れ方や進行の速度は異なります。
- 手続記憶が保たれている時期でも、認知機能の低下によって、段取りを理解したり、道具を適切に使ったりすることが難しくなる場合があります。
- 手続記憶の維持には、適切なケアやリハビリテーションが重要となる場合があります。
認知症の進行と筆跡鑑定の能否
認知症を患ってから書いた文字を筆跡鑑定する場合、比較対照する筆跡も認知症を患ってからの筆跡を使用しますが、認知症患者の中には御自身が認知症であることをネガティブにとらえ自ら行動を抑制されてしまうことがあり、筆まめだった方が筆を執らなくなるという状況に陥るケースを伺いますが、健常だったころの筆跡のみを使用しての筆跡鑑定では不十分なので、事案に対し効果的な鑑定結果を得られないことがしばしばあります。
ご家族や親しい方に認知症の症状が見られる場合は早期に専門医に相談し、適切な診断とサポートを受けることが大切です。
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