契約書の疑義を筆跡鑑定

契約書の筆跡鑑定は,個人・法人を問いません。

契約書は「金銭消費貸借契約証書」に代表される形式のものから,「婚姻届」に至るまで幅が広く,解釈も人により様々ですが,自分以外の人間となんらかの取決めを行い,その内容を「書類」として作成したものを指します。
遺言書と同様に,「本人確認」と「偽造者の発見」の2種類の目的により,筆跡鑑定が行われますが,大半は「本人確認」までの御依頼がほとんどです。ここでは,依頼時のご注意点をお伝えします。

契約書類は,原本を目視で確認しましょう

通常の契約では,同じ書類を2通作成して当事者間で保管しますので,1枚は手元に残ります。しかし,筆跡鑑定を依頼される方はどういう訳か「コピー資料」が多く,「原本資料」をお持ちでない方がほとんどです。また,契約者本人は既に他界され,相続人からの依頼の場合もありますが,同様にコピー資料が多いです。お手元にお持ちのはずの原本資料がどこへ行ってしまったのかは,この際余り問題ではありません。重要なことは,争いが起こりそうなときには必ず,問題となっている「契約書の原本」を,目で見て確かめることです。可能であれば手に取り,ボールペンで書かれた部分のへこみや,印影の状態なども確かめます。
このときに「契約書の原本」でありながら,ボールペンのへこみや,印影の部分に不審な点があれば,その点の説明を求めましょう。筆跡鑑定に至らずに解決する可能性もあります。
2000年頃から家庭用プリンターにスキャナー機能が付いた製品が普及し,「スキャニング偽造」がはやりましたが,目視でほとんどが見破れますので,まずは「原本を目視で確認」しましょう。

コピーは,カラーと白黒で

お手元に原本がない場合には,契約を取り交わした(とされる)相手から,その契約書のコピーを入手します。このときのコピーの取り方にも注意が必要です。まず,コンビニエンスストアなどに設置してある大型の「複合機」を優先的に選びます。次に家庭用の複合機となりますが,画質は最高にしましょう。ただしFAX機能付き電話機の,コピー機能を使うのはやめましょう。
コピーを取る際にはADF(自動原稿送り機)は使用せず,ガラス板面に契約書をまっすぐに置き,コピー機のフタを完全に閉めて,原寸大で「フルカラー」と「白黒」で1枚ずつコピーします。そうすることにより,ボールペンのへこみによる濃淡や,実印の印影なども鮮明になりますので,筆跡鑑定に多くの情報をもたらすことが期待できます。

法務局での写真撮影には,三角スケールを

staedtler登記書類などの場合には,法務局へ出向かれて,分厚いファイルから特定の書類を探しだし,写真撮影したものを鑑定資料として提出されることがあります。しかし分厚いページを見開きにして撮影されるため,書類が山形に湾曲してしまい,筆跡にゆがみが生じている鑑定資料を,しばしばお見受けします。
お骨折りいただいて恐縮ですが,鑑定資料としては不向きな状態です。
写真撮影には,是非三角スケールをご利用ください。建築士さんが製図などで使用する,立体的に三角の定規です。これを,分厚いファイルの筆跡部分の下部に,筆跡にかからないように押し当てて,筆跡部分の真上から撮影を行います。要するに,紙が湾曲しないように,三角スケールで押さえつけるのですが,三角スケールの1/100mの面を筆跡部分の下に押し当てることにより,原本のサイズが明確になりますので,対照資料との比較にも役立つのです。

対照資料は,日付に注意を

これは全ての筆跡鑑定に共通して言えることですが,対照資料は,鑑定資料に記載されている日付と,同じころの筆跡を収集しましょう。これは大きく分けて三つの理由からなります。
ひとつは,鑑定資料と対照資料の執筆時期は,近ければ近いほど鑑定精度が向上するためです。
二つ目は,対照資料執筆者の筆跡を時系列順に並べて,その中に鑑定資料を投入したときに,違和感があるかを観察するためです。そこで違和感が得られるようであれば,その点について徹底的に鑑定作業を行います。
三つ目は,契約書偽造に関するものなので,防犯上多くは書きませんが,対照資料は,契約書の作成された時期から,筆跡鑑定を依頼される時期(あるいは他界された時期)まで,幅広く提出されることをお勧めしています。

契約書は,契約者のみならず,そのご家族や周囲の人にも影響を及ぼすことがあります。的確な資料をそろえることに不安が生じましたら,お気軽にご相談いただき,確かな鑑定結果をお求めください。


 

2017-05-10